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猫殺しと趣味の問題

8月24日のSANKEI WEBで『「子猫殺し」告白に抗議殺到。坂東眞砂子さんのエッセー。18日付の日経新聞に掲載。「理解に苦しむ」などの批判。』とあり、結構話題になったようだ。

作家の坂東眞砂子が18日の日経新聞で日常的に子猫を殺していると語る

私は子猫を殺している。
家の隣の崖の下がちょうど空地になっているので、生れ落ちるや、
そこに放り投げるのである。
タヒチ島の私の住んでいるあたりは、人家はまばらだ。
草ぼうぼうの空地や山林が広がり、そこでは野良猫、野良犬、
野鼠などの死骸がころころしている。
子猫の死骸が増えたとて、人間の生活環境に被害は及ぼさない。
自然に還るだけだ。
子猫殺しを犯すに至ったのは、いろいろと考えた結果だ。

Jcastニュースによれば犬殺し疑惑も浮上して、各所で非難ごうごうであるが、僕は突っ込みどころが違うように思う。そんな中、可愛くなければ殺してもいいのか、という問題(なんでかフラメンコ)に異論があるが、こちらにもダーウィニズムな反論で降参してしまった。ダーウィニズムに合理性はあるが、個々の人間は肉体的特徴あるいは知的特徴によって生死がゆだねられるわけもなく、ダーウィニズムにしたがっているわけでない社会的な生物である。坂東氏も野良猫が社会的に害だといっているのである。

僕が考える坂東氏へのツッコミは、「子猫が野良猫となると、人間の生活環境を害する。だから社会的責任として、育てられない子猫は、最初から生まないように手術する。私は、これに異を唱えるものではない。」とおっしゃっているとおり、野良猫を人間の生活環境を害すると考えておられるから猫を殺している。しかしそれがタヒチにおいてどうなのかということだ。日本において、「1.猫殺しの違法性」と「2.野良猫の害」と「3.避妊手術は社会責任」という認識で世間は論理的に一貫している。僕の想像ではタヒチ社会においては2も3もないことで一貫しており、ゆえに猫を殺す必要性もなく1もないのかもしれない。よく考えた結果と言うのだから、パクられる心配はないのだろう。なぜ坂東氏は「野良猫が害」という概念だけとらわれているのだろうか。

そして坂東氏における「野良猫が害」という信念を背負って生きているのなら、キッチリ子猫を殺しているのだろうか。空き地に放り投げて、それで殺せているのか。子犬を「始末」したと言っているのなら、きっちり殺してから空き地に放り投げているということなのか。彼女はかわいくないから殺しているわけでなく、かわいいけど殺すこともあるいう文学をしたためたいのであろうか。坂東氏がいろいろ考えた結果だったら、それをちゃんと書きやがれとばかりに釣られてしまう購買欲を目論んでいるのだろうか。人殺してその肉を食べた佐川一政の手記も結構売れたそうだ。その手のものは僕にとって面白くもないし読みたくもないけど。

殺すなら食えと、ムツゴロウさんは言っていた(日日の日記)そうだが、仏教的な概念がポリネシアにまで届くだろうか。オセアニアやニュージーランドを含め太平洋、インド洋の島々にキリスト教が流入すると同時に、犬や猫が連れてこられ、固有の希少生物が絶滅したり、絶滅が危惧されている。現在ほとんどがキリスト教徒であるポリネシアであるが、昔はキリスト教徒ときたら人間至上主義だったが近年では、かわいい鯨を食ったら批判しかねない。

クック船長は、それは人類をむだに費やしている驚くべきことであると言って、次のように記した。「こうした蒙昧なる人間は、同じなら、人間を殺すという恐ろしいことをするようになった方が、はるかに望ましい……ところが、彼らはあさましくも人間の肉そのものを食べているのである」[註1]。もちろん、善良な船長は、そうした誤った考えが自国の人々にもあるということに気づかなかった。キリスト教徒はポリネシア人に仲間の人間をそれ以上殺すなと教える一方で、ポリネシア人が降参するまで徹底的に彼らを殺すということを、結局はやったのである。(Cannibalism

ポリネシアに白人が来る前は、カニバリズムがあったそうである。西洋人にとっては野蛮の象徴であろうが、中国では19世紀まで処刑された人から漢方薬作ったり、16世紀に朝鮮では人肉を売ってたそうだし、日本でも骨を食う習慣が今でもあるらしい。現在ではプリオンも怖いしタブーに分類されるものであろう。殺すなら食えというムツゴロウさんの言うことは僕も同感である。食ったら許されると言っているのでなく、たぶん無為に殺すなという意味だろうから。人間は人間も無為に殺すことがあるが、ぜひ死体をアンデスあたりのハゲタカ にでも食わせてあげたいし、僕も死んだら鳥葬でお願いしたい(参考:命と死体の重さ )。人が人を食うのはヤバイので他の動物に食ってもらえばよい。仏教のかけらも感じさせないヤクザのような生臭坊主どもは、肉食ういいわけに、「感謝」とかいいつつ、火葬場とのビジネスに余念がない。人間も死んだら食ってもらえばよい。さすがムツゴロウ氏は指をライオンに食わせている。

なんでかフラメンコ(フラメンコ も好きだがフラミンゴ だともっといいのに)で僕が思ったのは、子供はともかく、虫をかわいがる人間も悪趣味だということである。坂東氏は作家らしいが、もし猫が言葉を話せたらなどという小学生でも使う擬人を施すのはどうかと思う。「もし猫が言葉を話せるならば、避妊手術なんかされたくない、子を産みたいというだろう。飼い猫に避妊手術を施すことは、飼い主の責任だといわれている。しかし、それは飼い主の都合でもある。」書き手の都合を猫に勝手に喋らせているのである。坂東氏にとって、避妊手術と子猫殺しが等価だというのは、同意はしないが理解できる。悪趣味なのである。子猫殺しを選択することが悪趣味というのでない。猫を飼うという行為が悪趣味なのである。避妊手術と子猫殺しはどちらも不自然ということに変わりはない。

猫を飼うという行為は不自然であるが理解はできる。殿様には「これが南方にすむ珍獣でございます」と献上される。「かわいいのう」「めずらしいのう」。殿様趣味であり、悪趣味である。日本の一億総中流は、一億総殿様と化したのである。そして保健所で処分される犬猫は100万匹ほどになった。日本社会において、猫殺しはいけないなどという論理的一貫性などないのである。避妊手術は低価格で安全なものとなったようだが、ペットを飼う責任とか社会的な義務としての出費というよりもレジャー費用と思う。ペットショップには避妊手術の施された猫が大量生産される。喜んで買う人は悪趣味だと思う。

先日ライオンでなくシュレッダーが子供の指を裁断したことで、リコー、アイリスオオヤマ、カール事務機とメーカーの名前が次々と明らかになっているが、ライオン事務機は大丈夫だろうか。ライオンのシュレッダーも指に噛み付いたらしゃれにならんな。メーカーが当事者として事後責任を負えばよいというものではない。自動車やエレクトロニクスのような大きな業界にもなると、業界としての責任も生まれる。監督省庁もそれを求める。ペット市場が拡大しているのは、よいことだが業界としても成長してもらわないと困る。

保健所の苦労や、日本の固有種がペット業界が連れてきた外来種に駆逐されていることに、ペット業界自体が社会貢献できないのであれば、行政として業界に対する指導や、動物や昆虫の輸入規制強化、ペット流通への課税が求められる時期だと思う。家電リサイクル法なんて出来て久しいけど、ペットリサイクル法とかどうよ。ペットを捨てたり意地悪したら、飢えたライオンに飼われる。輪廻転生、万物流転のリサイクル。

ペット飼おうか考えている人には鳥好きを勧める 。どこにでもいるから飼わなくてもよい。だけど野鳥はあなたを愛してはくれない。愛して欲しい人は俺に電話して来い。俺が愛してやる(今なら先着一名)。でも俺を縛り付ける人はダメ。人間が人間を愛することが自然なことであり、同じ人間である坂東氏に「死ね」などといいつつも非人間の動物に対する愛を語る人間は悪趣味である。

海外から動物を連れてくる拉致行為を僕は憎むが、珍しいものを我が物にしたいのは分からないでもない。珍しい来客はうれしいものである。でも鳥だけは自らの羽ではるばる海外から日本にやって来ている。

Posted at 2006年08月27日 00:53

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