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絶望と情熱の間にあって、無力を嘆く。

絶望と情熱の間

性懲りも無く週間!木村剛:最強コンテンツ「ナベツネ」にトラックバックする。


野球界のマネージメントが貧困と言うより、マネージメントが存在しないのである。それを許している社会問題とも思っている。

近鉄が命名権の売却を検討したのは、苦境下の奇抜なアイデアである。渡辺オーナーは、それは球団の売却に他ならないので、30億円払えと言う。球団を売却するのに30億円、新規参入で60億円をプロ野球機構に払わなければいけないという規約を批判されながら、維持しつづけるオーナー会議が元凶である。あのときからシナリオは出来ていたと思わせる。

プロ野球球団は首都圏に集中している。相撲ですら海外興行し、劇団にしろ、コンサートにしろ地方巡業は、ファンを増やす常套手段である。これもダブルフランチャイズの禁止などの、プロ野球規約で制限される。興行の行われない地方の野球好きはTVでしか見ることが出来ない。つまり巨人戦だ。

戦力の集中問題や選手の契約金の高騰問題にしては日本でも1950年代から言われている事である。NFLでは1930年代から解決の道を歩んでいる。ところが日本のプロ野球ときたら93年には逆指名制度で時代を逆行し、98年にはオリックスのスカウトを自殺に追い込んでいる社会問題である。どうせみんな忘れているだろうけど。このときも渡辺オーナーと堤オーナーが組んで新リーグを設立すると脅して勝ち取った制度である。

このような批判は、成田好三氏のスポーツコラムや二宮清純氏などが緻密な裏づけと共に同じ事を言っている。彼らは同時に、どうなれば面白いかというワクワクするような理想像も提示してくれる。しかし、ジャーナリストの仕事はそこまでなのかもしれない。

私の立場はひと月前のエントリー でも書いたが、1リーグになろうが、合併回避されようがかまわない。公正明大なプロ野球組織の改革を望んでいる(つうか、組織の設立と言ってもいい)。これがない限り理想を語っても、一球団の収益改善を語っても無意味だからだ。

私なりの見解を付け加えれば、プロ野球の発展を考える組織が存在するなら、少なくとも日本でマーケットの独占可能な組織なのである。だって他にプロ野球組織はないのだから。「サッカーと競合する」と言う方がいるかもしれない。先週全英ゴルフの最終日4日目の中継をしていた。1日の入場料8000円、スコットランドのド田舎でトンデモもない数の入場者がいた。先月イギリスではウィンブルドンテニスがあった。ユーロ2004の放送にも熱狂しただろう。これらが競合しているだろうか?

むしろ競合を作っているのはプロ野球機構である。オリンピック日本代表に最高のチームが組めないのは、オリンピック開催中にプロ野球を興行しようとするからだ。シドニーでも、最強のチームを組めず敗退したのは、派遣拒否とセリーグの他球団へも圧力をかけた渡辺オーナーのせいだと言う人は多い。
日本でマーケットの独占可能な組織であれば、単独の努力と知恵でいくらでも拡大可能なのである。一球団でやれる事、選手会で出来る事など、時間もかかるし、大改革は難しい。

二宮氏との対談で木村氏はこう仰っている。

一般社会では、評論家のように頭と口を使うだけではなく、まず汗を流さなければ ならないし、血も涙も流さなければならない。ところが、いまの日本人は、おそらく頭がよすぎるんでしょうね。先頭に立って犠牲になるようなことはせず、「俺はいいから君から先に行きなよ」という(笑)。改革にしても起業にしても、先駆者ほど成功と同時に倒れる可能性の高いことをみな知っているのです。

プロ野球最大のコンテンツ「ナベツネ」というのが、皮肉だとしても、それを間に受けるのは、野球というコンテンツに興味がない人か、電車内で騒ぐ子供を注意しない日本の大人達に他ならない。誰か先駆者はいないのか。先駆者になれなくても、オーナー達の断罪を影響力をもって主張する人はいないのか。(ナベツネの面白さの分からないセンスのない奴!と言われると困る。最初は笑ったけど、何年も同じ事を聞いていると飽きるのだ。ガッツ石松の天然ボケは新しいバリエーションがありクリエイティブと言えるけど、ナベツネには無い。)


Unforgettable Days:サッカーファンから見た近鉄とオリックスの合併にまつわる問題」は興味深い。特に保育場の併設の話は面白かった。ここからは、Unforgettable Daysさんに言及させて頂く。

私は、「拮抗したゲーム」を見たいと思う人が大勢だとは思えません。

これはサッカーチームのサポーターとファンの違いだと思う。野球ファンには無党派層ならぬ、特定の球団のファンでない野球好きが多数いる。少なくとも僕の周りには、アフター5の憂さ晴らしや、デートコースの選択肢、合コンの代替的な観戦も多い。こういう場合は、強いチームの応援や、接戦でないと面白くない。TV中継でも経過が10対1ならチャンネルを変える。又この違いはアメリカ的ショウ文化と、ヨーロッパの市民革命的参加型文化の違いかもしれない。先週のMLBのオールスターでも視聴率が悪かったのは、初回にクレメンスが大量失点した事が原因と分析されている。野球にはJリーグのような入れ替え戦もなければ、TOTOもない、全国に球団が散らばっているわけでもないので、優勝争いをしていなければ、夏以降応援する気も失せる。その証拠に優勝争いしていることが観客動員に影響する。Jリーグのチームのどこかが優勝しても経済効果なんてニュースにならないけど、野球では必ずと言っていいほど、話題になる。

戦力拮抗と言うのは、私から見ると、自チームを魅力あるものにできない球団経営者の言い訳にしか見えません。

これはそのとおりで鋭い視点だと思うが、NFLやMLBが完全ウェーバー制(完全と言うのが変であって、日本のドラフトが異常だと思っている)等の戦力均衡化を図ったのは、試合内容がエンターテイメントとして最高となるように選んだ選択なのであり、巨人ファンを除く大半の野球ファンの声であるのも事実だ。

プロ野球経営について、縮小均衡かイノベ ーションかの二者択一を考えている人が多いようですが、いかなるイノベーションを進めようともいきなりの収入アップは期待できないのが事実でしょう。パイの大きさが急速に拡大する、新しいパイが生まれる、そういった見通しがあるとは思えません。一般論としては二者択一でしょうが、現実には縮小均衡から入るしかないでしょう。

この意見については、納得する面もあります。渡辺オーナーが無邪気にべらべらしゃべらなければ、それを受けたテレビのコメンテーターがせめて「良い子のみんなは、絶対ナベツネみたいなこと言っちゃいけませんよ」とか言っていれば、私もそういう見方をしていたと思います。しかしプロ野球には球団経営はあってもプロ野球経営と言うものが、ほとんど存在していないと考えているので仮に縮小方向に向かったとしても、同様に(一部の球団がわずかな増収に喜び、他の一部の球団がわずかな減収に泣くことはあっても)、パイの拡大も新しいパイが生まれる見通しがあるとは思えません。ただ縮小方向は安易と言うだけです。渡辺オーナーがベルディーに「読売とつけさせないと脱退して新リーグを作るゾ」と言っても、勝手にどうぞwと言える権力者、チェアマンがプロ野球にはいない。

だけどイノベーションするにしても、リーダーが必要である。今のプロ野球にそんな人見当たらない。いたとしても、どこかの球団オーナーの息がかかっていては真っ当なイノベーションは、ありえない。もし木村剛さんが野球好きなら、影響力も行動力もあるので、イノベーションの首謀を担いで欲しかったけど。。。将来プロジェクトXになりますよ。かつてのフリューゲルスファン同様にバッファローズファンは今、絶望と情熱の間にいる。

Posted at 2004年07月21日 23:54

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