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一匹狼のルサンチマン

一匹狼というのは、一見カッコいいようだが、群れから外れたものである。一匹狼に社会不適合者の烙印を押すつもりはない。一人で仕事してるような人も、よく一匹狼を気取ってる。一匹狼に言う事があるとすれば、一匹狼を売りにしないほうがよい。強がりに聞こえるのです。おいたをしてしまった子供なら悪ぶることもあるけど。自分をかっこよく見せたいだけ。

以前、フジテレビの「トリビアの泉」で一匹狼の遠吠えが何て言っているのか、バウリンガルで確認する企画があった。確かそのとき彼は「僕はどうしたらいいんだろう。」と吠えていた。

鷲は決して群を為して飛ぶことはない。そうしたことは椋鳥に任せたらいい。上方へと舞い、爪を持つこと、これこそ偉大さの運命である。(ニーチェ「力への意志」)

おそらくニーチェも一匹狼だったんじゃないかと思う。彼は詩人なので「孤高」を詩的に表現しただけかもしれないが、凡人の僕からすれば、一匹狼のルサンチマンに聞こえなくもない。そんな事いうのが僕のルサンチマンと言い返されそうだがよく知らない。椋鳥の名誉のために言っとくが、仲良しでつるんでるわけじゃない。生きるために群れているのである。ムクドリなめんなよ。

内田樹の研究室「資本主義の黄昏」にNEETの事が書かれているが、僕がニートに思う事は以前に書いた ので、ちょっと気になったところのみ。

動物の世界に「とりあえず必要」とされる以上の財貨やサービスの創出に「義務感」や「達成感」を感じる種は存在しない(たぶん)。「糸の出がいいから」という理由で自分用以外の巣を張る蜘蛛や、「歯の切れがいい」からという理由で隣の一家のためにダムを作ってあげるビーバーを私たちは想像することができない。そのような「過剰な労働」は動物の本能にはビルトインされていない。人間は「とりあえず必要」である以上のものを作り出すことによって他の霊長類と分岐した。どうして「とりあえず必要」である以上のものを作る気になったのか。たぶん「とりあえず必要」じゃないものは「誰かにあげる」以外に使い道がないからである。人類の始祖たちは作りすぎたものを「誰か」にあげてみた。そしたら「気分がよかった」のである。あるいは、「気分がよい」ので、とりあえず必要な以上にものを作ってみたのかもしれない。

僕は蜘蛛や蛾が大嫌いなので、哺乳類と一緒にして欲しくないが、ビーバーの立派な巣にはときどき別のネズミ科のマスクラットが居候する事がある。比較的小さなマスクラットは健気にも家賃代わりに自分で運べる葉っぱを巣の補強に持ってくるのである。ビーバー君が「義務感」や「達成感」を持ってるかどうか知らないが、潔く余剰を分けている。

人間に限らず、猿や鳥の一部が群れて行動するのは、進化の過程で群れる事が有利だったからである。群れで行動する種には給餌行動喧嘩の仲裁 など自分が食べる餌を捕獲したり巣を作る以外の、過剰な労働も存在するのである。それは何も気分がよいからではない。群れで行動する一員として自分が生きるために行なっているのである。

遺伝子の利己によって、エッチは気分のよさを求める行動と言えるかも知れないが、一匹狼はそれが出来ない。ところが人間の場合は、オナニーや性風俗産業の技術革命に伴い、一匹狼でも気持ち良さを味わう事ができる。もちろん外敵に襲われる事もなければ、餌も十分ある。だから勘違いして一匹狼はかっこいいという人間ならではのカタルシスに浸るのである。

不本意でも一匹狼は生きることを辞めない。一人で餌を見つけ、外敵から生き延びる幸運も必要である。いずれ力をつけ新たな群れを見つけるかもしれない。人間は群で生きる動物である。

Posted at 2005年05月26日 08:31


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