未亡人
近所に未亡人が住んでいる。
ゴミ捨て場や休みの日はときどき顔を合わせる。
僕が他県から越してきたとき、ゴミの捨て場で分別の仕方を聞いたのも彼女だったかもしれない。彼女でなかったかもしれない。
でも僕の記憶は彼女だった事にする。
いつか世間話をするようになった時に、「分別教えてもらったことがあるんですよ。」と言うつもりだ。
正直、未亡人かどうか知らない。ただ一人でいるところしか見たことが無いしスーパーのレジで見かけたとき、一人分の食材しか買っていなかった気がする。そして1年程前に近所で通夜があったとき、喪服姿で頭を下げているのを見かけたのだ。
未亡人と言うと、僕の場合、「イヤ。まだ主人が忘れられませんの」ということを思い描く不届き者であるが、正確な語義はともかく、未だ亡くなっていない人という意味で、結婚さえすれば夫婦同時に死なない限り半数が未亡人になるのである。
おそらく何百万人という単位で、未亡人がいる。そしてその多くが核家族のために一人で生活しているだろう。一人分の買い物をし、一人分の調理をし、一人分のゴミを出し、一人分の洗濯をする。そしてその近所のアパートでは僕も一人分の生活をしている。ちなみにゴミは2週間分たまっている。僕のゴミ出しをやってくれって分けじゃなくて、遠方に住んでいるかもしれない彼女の子供や孫に、彼女の確実でシンプルであろう営みを教えてあげたい気分になった。
それより僕の自堕落な部屋を何とかしろ。っていうか今しろ。
Posted at 2005年11月18日 22:06
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