墓参り
実家に帰ると母に墓へ連れて行けと言われ、家から少し離れた所に止めてある車を取りに行くとタイヤがパンクしていた。失望しながらスペアタイアに交換すると汗だくになった。
滴る汗がポタポタというか、ポタポタポタポタポタポタポタポタとアスファルトに落ちるのに目も落とすと、セミが仰向け(って言うのかなあ)で足をじたばたしていた。
いったん車に乗り込んだが、もう一度、外に出て、セミをうつ伏せ(って言うのかな)に戻してからエンジンに火をともす。
向かった墓は、母の実家の墓で、知っているのは、僕が子供の頃に死んだ祖母と何年か前から入っている叔父(母の兄)の事だけだ。他の人のことも母から何度か聞かされたと思うが、会ったことある人しか、どうしても覚えられない。
墓守をすべき叔母は叔父の生前に遠方に引っ越しているので、母の墓参りには子供の頃から時々付き合っている。
持ってきた線香すべてに火をつけたものの、祖母の墓だけでは、多すぎたので、少しずつ、両隣の墓にも供えた。
父の実家からは、すごく離れており、行った記憶もないが、父の兄や姉が近くにいるので、父すらほとんど行った事ないだろう。父は近所に墓を立て、母や、僕の兄や兄の家族はそこに入るのだろう。
僕は将来、墓に入るのだろうか?どこかに墓を立てるだろうか?その墓を参ってくれる人はいるのだろうか?と漠然と増殖する墓と、いずれ無縁仏になる墓に思いをめぐらしながら、帰路につく。玄関で母を降ろし、元の場所に車を止める。
さんざん僕の汗で湿らしたアスファルトはすっかり乾いていた。そのそばにはセミの死体が仰向けで転がっていた。僕がうつ伏せにしたセミかどうかは定かでないが、セミの死体のデフォルトは仰向けなのだろうか。
人間が目を開けたまま死ぬと、誰かがそっと目を閉じさせる。僕がセミをうつ伏せにした行為は、いまにも死にそうな人の目をこじ開ける行為だったのかもしれない。
だれも供養しないであろうセミに、あまった線香の一本だけでも、残しておけばよかったと思う。墓参りという行為は、僕をそういう気分にさせる。
Posted at 2005年08月19日 00:31
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コメント
ふぁる からコメント
セミは何かにつかまって安心したかったと思います。
仰向けじゃ、足が何にも触れなくて不安ですもん。
地面に触って、うれしかったと思います。
セミ・・・
こないだ、車の行き来が激しい道路にセミが落ちて、すごい勢いで「みーーーーーーーー!!」って鳴いていたんだけど
車の風圧?で、仰向けからうつぶせになると、ぴたっと鳴くのをやめました。
仰向けってきっとセミにとってはとても怖いんだと思う!!!
うつぶせになって、少し人心地を取り戻したんだろうな。セミ心地かな。
だから、私も、セミはなるべくうつぶせにしてあげようと思っています。
Commented at 2005年08月21日 01:42
eda からコメント
一緒に「全国ひっくり返ったセミをうつぶせにする会」を作って、日本の隅々のひっくり返ったセミを元通りにしていきましょう!エイエイオー
Commented at 2005年08月21日 23:51