鳥新聞

アンチヒューマン、鳥テイストなニューロ情報誌

Editor: the Birdwatcher Of Prey メール | Q&A | 鳥瞰図

0.鳥新聞トップ/ ハトの散歩トップ

<< 前の記事 | メイン | 次の記事 >>

心も遺伝する

以前書いた「少年事件は誰のせい 」という記事の中で「宗教対立の唯一の解決策はお互いが会わないこと」と書いたが、反論があることは想定していた。僕の意見が非現実的で、対立の解決手段として現在主流となっているのは対話だからだ。どうしても民族や宗教の対立の少ない島国に住んでいると見逃してしまうが、中東などでは対立する者同士が会わざるを得ない環境にある。クラスメートや職場にどうしても気に入らない人がいても、クラス替えもあれば、転勤や退職という転機もある。持ち家のある人の近所付き合いだとなかなかそうはいかず、死を願うばかりか、みのもんたに相談するくらいだ。実際にこのような経験を乗り越えた方は、対処法をご存知だろう。オトナの拒絶だ。小中学生の皆さんなら、いじめという対立を選ぶかもしれないが、対立をのがれている方は対話ではなく、相手に立ち入らず、相手にも立ち入らせずマイルドに拒絶する処世術を見につけていらっしゃることでしょう。

先月イスラエルのユダヤ人とパレスチナ人の子供を呼ぶイベントがあった。緊張する子供たちも最後には打ち解けて仲良く日本を去り、主催者やニュースを見た僕は感動した。しかし残念ながらこういった対面の一つ一つの積み重ねが和平につながるとは僕には到底思えない。子供同士に意味のある対話がなされたとは思えない。私なんか子供の頃覚えていることといったらエロ本をスクラップにしていたことぐらいだ。それに彼らが自分のコミュニティーに戻り生活をする中で子供の友情がいつまでも続くとは思えない。僕自身いくつかの友達や恋人関係がお互い悪意がないにもかかわらずささやかなだらしなさや、わずかのわがまま、心情の変化、アジフライにしょうゆかソースかといった信念の違いで疎遠に追い込まれた。逆に新婚さんいらっしゃいを見ると最初いけ好かないと思っていた相手と結婚することもあるようなので、地道な対話が和解につながるかもしれない。しかし結婚相手は一人でいいので、あくまで気に入ったから結婚したのだ。なにも隣人達と結婚するわけでもないし、親友の関係を築く必要もない。立ち入ったことを知らなければいいものの、おばさんたちが噂話が好きで詮索するからよけいに悪い事態になる。ユダヤ人とパレスチナ人は親友になる必要はないのだ。近づかなければいいのだ。仲良くなるにしても昨日まで仲悪かったのが、殴り合いのけんかして、お互い疲れて草むらに寝転がって「お前なかなかやるな」「お前もな」みたいに翌日から急に親友になるわけないのだ。

好きな人が嫌がることばかりするとか、嫌いなのに執着するという人は幼少ならともかく大人であれば変質者だ。イスラエルの与党リクードの党首達は、パレスチナに立ち入ったことをしている。パレスチナとの交渉はビジネスライクにすればいいことだが、イスラムの聖地などに立ち入ればパレスチナ人が怒るのは当然だ。リクードにとって、パレスチナ人が攻撃してくればくるほど右翼の支持者が増えるので、わざとパレスチナを挑発しているのかもしれない。だけどユダヤ人がリクードを選んでいるのだから仕方がない。なぜリクードを選ぶのか考えてみると、極右ユダヤ人が変質者としか思えない。つまり民族ぐるみの精神障害を持っているとしか見えない。国際的にも独立国として認められている法治国家の政府が民家にミサイル打ち込んだり、堂々と暗殺したりするのも病気であればうなずける。

病気や精神障害と言ったからといってユダヤの人はどうか気分を損ねないで欲しい。精神科医の書いたものを読むと、立派に社会生活を営んでいる人でも本人も回りの人すら気付かない障害を持っている人がいるのだ。日本では障害というと語弊があるのでPTSDとかやわらくトラウマと言ったりする。僕は戦争を子供時代に体験した何人かの老人と酒を飲んだことがあるが、戦時中貧しくきわめて困難な経験をした人の中に高慢だったり、平気でうそをつくような異常が観察された。それが戦争体験によるものなのかはわからないが、そのじじいがすごくウザくて、軽蔑してしまったので、自分の勝手な解釈で、大目に見てやったのだ。

このような精神障害の治療がどのようなものかは知らないが、苦痛が大きければ大きいほど治療は長く困難になると思う。殺戮の悲劇は肉体の苦痛や一時の心の苦痛を生むだけではなく、その悲劇が強ければ強いほど本人には気付かない精神障害も与え、その障害は伝染し世代をも超えるのではないか。話は少し飛ぶが外国の刑法では懲役100年とかあるけど、途中で罪人が死んだからといって残りの刑期がだれかに引き継がれるわけではないが、心情的には罪人の子孫は引け目みたいなものを受け継ぐのではないだろうか。つまりユダヤ人のバビロン捕囚とか、ナチスのホロコーストとかの強い困難は、世代を超えて苦痛を遺伝しうるのではないか。バビロニアやナチスの方がいらっしゃったら失礼かもしれないが、それほどひどいことをしたということだ。日本の裁判では被告に精神障害が認められれば、責任能力なしとされる。被害者は「ふざけんな罪を償え、死刑にしろ」となるが、被害者もひどい苦痛を受けたことで、冷静でいられるわけがないのだ。下手をすれば被害者家族もまた精神に障害を受けてしまう。これじゃ精神的障害者だらけになっちゃうよ。人間のストレス耐性だけが頼りだ。

そんなわけでユダヤ民族に精神的障害が見られるからといって、パレスチナ人も冷静でいられない。自爆テロも病気だ。今も新たな苦痛を受け続けているパレスチナ人とユダヤ人に必要なのは治療だ。対面ではない。精神的苦痛を受けた被害者本人が加害者と裁判を共にしなければいけなくなったときは、なるべくあわせないような配慮がなされるものだ。ボクシングの試合なんかで試合後抱き合ったりしているが、中には負けてはらわた煮え繰り返っているのに、戦った2人が仲良くなると言いうのは、はたから見ると受けがいいのでしょうがなく勝者に歩み寄っている場合もあると思う。ケンカも和解も大衆はどっちも大好きだからマスコミや政治家はこれらを自分のために演出することがある。会いたくもない嫌いな人とケンカも和解もしたくないのに、第三者に無理やり引き合わされるなんて僕はごめんだ。もし憎たらしい人間に会いたいと言うのならそれは変質者だ。それでも第三者がイスラエルとパレスチナを仲良くさせたいと言うなら、女が好きなストレートな男同士を結婚させるようなものだ。

問題をすべて異常で片付けるのは簡単で、問題解決に向けて前進しないという人がいるかもしれない。しかし対話こそが対立を解決する手段だと盲目的に信じるのは、写真という新しい技術を撮ったら魂をとられると受け入れなかった昔の人と変わらない。精神医療の分野はまだ歴史が浅いかもしれないが、今後の研究が期待されることは間違いない。昨年もオーストラリアで著名な科学者や哲学者、宗教家達が『科学と精神についての国際会議』を開催している。(内容はよく知らないが)。僕はいずれいたいけなユダヤやパレスチナの被害者達が、その苦痛を伝染することなく、やわらげる技術が進歩するものと思う。
2003/8

Posted at 2003年08月30日 21:02


トップページへ

前の記事へ「マンギョンボン号」
〜アナウンサーたちはよくかまずに言っていると感心している。わざわざ日本語入力システムに登録する気にならないのでカタカナで表記する。民放の字幕では「万景望号」と表記しているが、そんなの読めないので、NHKのようにカタカナで表記するのが正しい。だ...

次の記事へ「ダイエー」
〜バラエティー番組で王監督を侮辱したとして、ダイエー球団がフジテレビに抗議した。球団側が大人気ないとは思うが抗議するのは自由だ。むしろ傍若無人なマスコミには大いに抗議しよう(怒るほどでないコントだったけど)。だけど優勝争いのトップを走っている...

トラックバック

この記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。

URL: http://eda.s68.xrea.com/x/mt/mt-tb.cgi/72

この記事のタイトル: 鳥新聞: 心も遺伝する

コメントしてください







名前、アドレスを登録しますか?
(Cookieに保存します。)




Copyright(C)2004 EDA Corporation. All Rights Reserved.
メール | Q&A | 鳥瞰図 | 鳥新聞トップ | このページの頭