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階層構造

僕の想像では、中根千枝の「タテ社会の人間関係」あたりを下手に受け取って、日本の縦社会は変だみたいな方向に行ったのではないか。挙句の果てに、近年の縦割り行政とか階層社会といったキーワードなんかと混同したりなんかして、階層構造を頂点が支配する封建主義的なものと錯覚している人が結構いるのではないか。

ハーバートサイモンの「システムの科学」は、本人によればコンピュータであれ社会組織であれ自然物と人工物との調和的混合物であることを書いている。日本版向けに書かれた著者の前書きで、「アメリカ人が感ずるほど不思議とは思われないであろう。自然と人工との関係を理解することは、人間の心と人間の組織を理解するのに基本的なことである。（略）盆栽芸術を理解する社会で理解され受け入れられることを熱望している」と日本の読者に期待している。

果たして、日本に受け入れる土壌が現在あるだろうか。どちらも古い名著で僕の産まれる前の話だったりするので、彼らの見る日本と現在の日本と違っていても不思議じゃない。昔はどうか本でしか知らないが、少なくとも現在はタテ社会を構成する階層構造は他の国よりも損なわれているのではないだろうか。想像です。

昔おこなわれた日本はタテ社会であるという指摘は、欧米には日本の高度経済成長を支えた根拠としてモデルにされた。今でこそ、欧米のエグゼクティブなビジネスマンが、部下をホームパーティーに呼ぶなんてイメージがあったりするけど、これは日本モデルをお手本にした姿なのである。欧米本来の個人主義的な姿からは逸脱した、エグゼクティブだからこそこなす面倒な仕事なのである。想像だけど。

階層構造の語感からすると、地層のように各層が分断されているようなイメージがあるが、逆である。階層と別の階層の結びつきが強く、横の同一層の結びつきが弱いのである。兄弟や従兄弟の関係よりも親や爺さん婆さんとの関係が強固なのが階層構造である（注）。お年玉くれるし。

注：家庭によっては、にいちゃんやねえちゃんが、妹や弟の面倒を見る役割を与えるケースもあるが、両親が部長に昇進し、兄や姉が係長に昇進するケースと同様に、階層構造が損なわれるものでない。

本誌は鳥の話題を除き、とりわけ社会問題に関する記事などで、お前の文章は説得力が無いと言われるけど、別に誰かを説得しようなどと思っていない。特に今回は、積極的に説得力の無いように書いているのであしからず。ただその説得力の無さに、異議を唱えていただくのは大歓迎ですし、説得力を持たせるべき情報を提供する気になるかもしれません。謝るかもしれません。

Posted at 2006年12月21日 23:13