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シンドラーのリフト

数年前に少しエレベータ業界の人と付き合いがあった。注文が少ないと、上司から「親に買ってもらえ」と恫喝されたそうだ。

その頃、エレベータに乗るとメーカーを見たりしていて、三菱、日立、オーチス、フジテックが多分日本の主要だと思うのだが、シンドラーは始めて聞いた。日本語の語感からすると、縁起の悪い名前である。

エレベータの売買はダンピングである。ダンピングが成り立つのは、保守契約で収益が確保されるからである。その保守契約をシンドラーが手放し、独立系の会社が保守を担当していたと言うのは不思議な話である。

無理が通れば、道理が引っ込むわけで、ダンピングが通れば、割高の保守が伴うのである。

原因究明は極東ブログとかジャーナリズムに任せるとして、僕が取り上げるのは、ダンピングについて率直に思うことを書くだけ。以前に小さな会社で引退する年配の営業から顧客を引き継いでいるときに、「損して得をとれ」みたいなことを言うのである。

馬鹿じゃないかと思った。損する必要も得する必要も無いのである。対価を得ていればいいのである。

売る側だけでなく、買う側も妥当な予算を組むのを怠けているのである。市場価格は変動する。例年の予算がどうのこうの言ってんじゃねーよ。

実際は得したらうれしいし、例年通りに売り上げが期待できると大変楽なので、黙ってるけど。

その昔、ナチスに入党したシンドラーさんは、工場経営に乗り出し、賃金の安いユダヤ人労働者を使って、軍需もあって大儲け。当時ユダヤ人はナチスの方針で片っ端から強制収用所行きであった。シンドラーさんがナチスに逆らうことは危険を伴うのだが、勇気や賄賂でしのぐ。安い賃金というのはダンピングであるが、賄賂とナチスの凶行という無理が平行していたのである。

シンドラーのリストによって、千人くらいが命を救われ、その子孫は現在数千人だそうだ。その数千人にとってシンドラーは英雄である。シンドラーのリフトは何人かの命を奪い、その子孫の将来は無限であった。

エレベーターが割高の保守契約を守るには、技術情報の秘匿である。メーカーの知的財産であり、なにも悪いことではなく、ダンピングという無理が通れば、収益を確保するため当然のことである。

独立系のメンテナンス会社が保守したければ、シンドラーと守秘契約をした上でその知的財産を購入し、メンテナンス費用に上乗せされてしかるべきである。

まあ株買うつもりもないし、業界と関係ないから、よく知らないけど、エレベーターは乗ってるときは気づかないものの、えらい勢いで、えらい重量を、えらい高いところまで引っ張り上げたり、落下したりしてる乗り物に身を預けている。ダンピングが悪いとは言わない。ダンピングするなら、エレベーターを販売したところがちゃんと保守し、責任をとればよい。製造責任と保守責任を切り分けるなら、ダンピングはやめざるを得ないだろう。だとしたら、いままで半値八掛けで仕入れていたエレベーターが急騰し、保守費用が適切な競争価格となる。製造と保守の責任を分けるのなら、買う側の予算も初期コストと運用コストを適切に配分する面倒に見舞われる。

ビルオーナーがエレベータはどこが良いと言わない限り、通常建設を請け負うゼネコンかサブコンが発注するだろう。ゼネコンはいかに安く仕上げかに長けており、半値からさらに八掛け、さらに三割引と買い叩いてきたのである。叩かれる代わりに保守契約を指定してもらう。今回の東京都の公営住宅の事故には、長年、日本の建設業界にあったエレベーターのダンピングシステムへの造反であり、表立っていないがゼネコンにも胡散臭さを感じる。耐震偽装のこともあったし、いっぺん建設業界全体と国土交通省あたり洗いざらいどぶさらいしたらどうだろうか。

安物買いの銭失いの経験が一度でもあれば庶民的お買い物感覚は、初期コストが多少高くても運用コストを低く抑えたい。ところが役所や大企業の予算を使う連中は毎年の運用コストが高いのはうれしいのである。なぜ今回は独立系のメンテナンス会社にしてまで、運用コストを下げたかったのだろうか??

Posted at 2006年06月17日 14:20


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