無言のメッセージ
ガ島通信:ブロガーの増加が「匿名」を吹き飛ばす? 米国の例に学ぶより
インターネットの発展初期には、アメリカでも多くの人々が、オンラインで偽の名前を使用していました(「インターネット上で、誰も私が犬であることを知らない」というパロディがあるほど)。しかしながら、アメリカにおいてそのステージは、おおむね終わったと思います。ブロガーだけでなく、一般的なネットユーザーでさえ「サイバー」ステージを過ぎ去り、匿名や偽名(ペンネーム)で書かなくなりました。
日本のブログもまた、過渡期なのだろうか?僕はそうとは思えない。日本のブログは遊び場であり、参加する場であり、アメリカではビジネスの場であり、読む物なのだと想像している。書き手にとって日本語圏の数千万と、英語圏の数億から数十億という単位の規模の違いで、書き手にビジネスをもたらさないのではないだろうか。
Proving grounds of the mad over logs:マスコミ入門 (3) 破壊的取材より
なぜ最初から正確な公表ができないのかK氏(←新聞社の人:僕の注釈)に尋ねてみたところ、欧米では、公表することは当然の権利であるという意識があり、自発的に公表するものだが、日本人は公表に不慣れなのではないか、とのことだった。正しく伝えることのメリット、正しく伝わらないリスク、そういったことへの無関心が結果的に「虚偽体質」「隠蔽体質」ということになってしまうのだろう。
この二つの記事を読んで僕はなんとなく、初めて留守番電話が自宅に導入された時を思い出した。帰宅後留守電に何件か録音されていても、全て無言のまま電話が切られているのである。インターネットの普及以前に企業で利用されていた、ボイスメールというのが、アメリカではよく活用されたが、日本にはなじまなかったそうだ。アメリカでは国内に時差があるから、積極的に活用しないと、効率が悪かったからなどと言われたらしい。
僕は留守電には必ずメッセージを入れるようにしている。要求や質問を残しておけば、相手は回答を準備して連絡をくれるので、双方効率的だ。逆にメッセージをもらう側としても「電話を下さい。」というだけのメッセージは時々いらいらする。それは無言のメッセージに近い。要件はなんやと電話して「何々の書類をファックスしてください。」とかだったら、ファックス送って終わりだったはずだ。最近では着信履歴を残しておけば、折り返し電話をもらえると思っている奴がいる。そんな奴には電話はやらねえよ。女子は別だが。
話を元に戻すが、公表が下手、サイバースペースがリアルと結びつかないのは日本の文化なのだろうか。
新渡戸稲造「武士道」第2章武士道の淵源より
運命に任すという平静なる感覚、不可避に対する静かな服従、危険災禍に直面してのストイック的なる沈着、生を賤しみ死を親しむ心、仏教は武士道に対してこれらを寄与した。(中略)言語による表現の範囲を超えたる思想の領域に、瞑想をもって達っせんとする人間の努力
そうか留守電に入っていた無言のメッセージは、ストイック的なる沈着であり、瞑想をもって達っせんとする人間の努力だったのだろうか。僕はもともと武士道なんてものは、良く言えばコミュニケーション能力欠落の言い訳みたいなもんだと思っている。悪く言えば、仕官先の侍に対する言論封鎖のための道徳の名を借りた巧妙な束縛。
Posted at 2005年06月18日 01:23
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