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逆ヒエラルキー、和、小さな政府、イラク

僕が、とある大企業に全社導入される機材を受注したとき、導入を担当するセクション、システムを担当するセクション、運用を担当するセクション、そして資財管理を担当するセクションそれぞれの担当者または責任者に営業活動をする必要があった。それはそれぞれセクションの力関係が均衡していたからだ。一方で、機材の導入に際して一つのセクションの力が圧倒的に強い、あるいは一人の責任者がいくつかのセクションを統括している場合は、同程度の規模の機材でも効率的に営業活動ができる。

労を惜しまない営業担当者なら、前者のほうがいい会社だと思うはずだ。後者のほうがすべて悪い会社というわけではない。後者の場合にひどい時は、責任者が悪さしてクビになることがある。僕も関係を築こうとした人物が突然いなくなり、びっくりしたもんだ。あるいはなにも知らない幹部の一声で、勝手にひっくり返すこともある。それは営業泣かせであるだけでなく、自社の担当者のモチベーションまで低下させるのである。

おそらく多いのは後者である。前者が営業の手間がかかるだけでなく、力の均衡したそれぞれのセクションにとって、結果として会社にとって最適の結論を導くために、綿密なコミュニケーションが必要である。その結論に幹部は口出しできないし、社員にも責任感が生まれる。モチベーションの低い社員達であれば、そんな面倒くさいことやってらんないから、勝手に決めてくれとなる。幹部も意思決定をスムーズに遂行したかったら、簡単に権限を人に譲ることはしないだろう。前者のような逆ヒエラルキー的な組織が生まれたのは、資本主義の恩恵であるなあと感じる。

梅原猛は「哲学への回帰」の中で、

聖徳太子の「和を以って貴しとなす」というのは、和があれば議論ができるということです。議論があれば理が通っていく。(中略)会社でも本当の和があれば、社長と社員がどんどん議論できる。(中略)今の日本で言われる「和」というものは、聖徳太子の「和」でなくて、議論で対峙したら、足して2で割っておこうとか、まあまあで済まそうかということです。これでは無難かもしれませんが組織は発展しない

似たようなことを言う政治家もいる加藤紘一政策辞典・小さな政府から引用すると

日本は世界史の中で特筆していいほど見事に近代化を成し遂げました。そのためには中央政府が大きな権限を握り、政治・経済・社会生活はもちろん、時には個人の生き方まで国が指導するシステムが必要だったのです。(中略)国全体がさまざまな集団に組織化され、人々は集団の一員としての生き方を強いられますから、個人が見えなくなり、それとともに無責任な風潮が蔓延してきました。そして国民は、自分の属する集団や国に過度に依存するようになっているのです。だから、権限、財政規模、仕事の範囲で「小さな政府」にし、「おかみ頼り」の雰囲気を一掃し、国民一人一人が、もっと伸び伸びすると同時に責任を持つ社会にしようというのが改革の基本です。

昨日国連が今月末にイラク暫定政権を発足させる決議を採択した。民主的になるのはいいことだと思うが、フセイン政権下での憎しみ、今回の戦争での憎しみ、多民族のイラクを統治するにはどうしたらいいのか、僕に分かるはずもなく、まさに神のみぞ知る領域だ。ビジネスマン風の先進諸国にすれば、営業活動のやりやすい中央集権的な政府を築きたいことだろう。戦後の日本もアメリカが営業しやすい国に仕立てたのではないかと、根拠なく疑っている。僕としては、政府の力よりも、国民個人個人の力が強くなればと思う。イラクのみならずアラブでは血縁、地縁、部族のつながりが強く、部族長が個人を束ねうる存在を続けており、隣接する部族間でも同じイスラム教の元で徹して議論できるすばらしいシステムがある。これこそ戦後の日本が失った物ではないだろうか。梅原猛は先の引用に続いて、戦前の日本の優秀な産業人、政治家、教育者には日本古来の哲学が根付いていたと言っている。日本が日本古来の哲学をなくしたのならそれは残念なことだ。僕が失った清純を持っている若い女の子が僕は好きで、それを失って欲しくないと思うのと同じで、イラクにはイラクの哲学を失って欲しくないものだ。

Posted at 2004年06月11日 00:07


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